いつも通る人にいつも通りの道.朝は静かに通過する.駅を出てバスターミナルに並ぶ同僚.バスから降り,しばらくの坂道を越え,長めの信号を悠々渡ると,職場のビルに辿り着く.朝は静かに着火する.PCを立ち上げ,メールを読み砕き,きょうやることを整理する.9時までしばらく日報を書いておく.上長の「はじめましょう」のひとことで,仕事は始まる.朝は静かに燃焼する.
この会社は障がい者を中心とした福祉施設でありながら,全国的にも稀な,ちゃんと仕事が来る職場である.事業売上で給与を賄う仕組みがあり,働きがいを求める有能な障がい者が集まる.DTP,ウェブ開発,ハードウェア保守.特色のある運営をする施設長のおかげか,社員のなかに個性の和が広がっている.技術を磨くには量も質も,つまりは時間が必要だが,最長8時間契約なので帰宅して2時間はとれる.
社内政治は変化が激しい.上司の管理が行き過ぎると思考の自由が損なわれる気がしてくるが,部下としてできることをやっていくうちに組織のなかでの役割を考えるようになってきた.部下は部品ではないが,上司は電源であろう.電源なしでも動けるように3日間くらいの作業は常時確保している.仕事を抱えている安心を満喫しておきたい.
きょうも見学者が来訪し,転職の困難を述懐していた.障がい者枠とはいえ,社内差別は激しいらしい.どうせ言動を笑われるくらいなら,転職しないほうがましだ.笑われることへ恐れを感じる性格は変わっていない.それでも笑われることをしてしまう天然さは,言動の次の反応を考えて思い留まるくらいしか対処法がなく,苦しみの原因になっている.どうしても笑われるなら,転職しない.転職しない理由をこのように考えている.
