自分がほんとうに知っていることが少ししかないことに気づく.万有引力,数学の概念,十字架.普段考えている事柄が少ししかないようなのである.まあ少しの知識で長い時間考えることを楽しめるという趣味は良いものだと思うし,教育とは大人になって残っている事柄だという名言もあるくらいである.いくつかの関心を追究できているだけでも益しなのだろう.
もっと知りたいという知識欲があった時代が過ぎて,結局関心が残っている事柄は10個もない.勉強不足といわれれば甘んじなければならない,学生のときもっと勉強するべきだった,そういう後悔は誰にでもあるだろう.脳に障がいがあるゆえに偏った学習をしてきた,その不均衡を指摘されたら仕方なく受け入れるしかない.常識のなさは自分の弱点だ.
うれしいことに,教会での説教が,最近頭に入るようになった.きっかけは,自分は十字架をほとんど知らなかったと観念できたところにある.曲解が多い読み方をしていた原因が,十字架さえ理解していなかった点にあったと分かった.十字架!十字架!これさえ分かってしまえば大丈夫!おかげで悩むことも気が滅入ることも落ち込みもなく,病状もすっかり回復したようだ.
そういうわけで,知っていることが少なくても,分かることが増えて楽しかったり,新しく知って生活に役立てられることが快かったり,そういう生活に変わりつつある.ちょっと前まで,知識はいつか人間にすべて知り尽くされてしまうからと心配だったが,知らないことを観念すればこの情報通信時代を充分謳歌できると分かった.たいへん楽しい時代を生きて幸いである.
