私は過集中である.顕著なため障がい者手帳さえ持っている.以前の職場までは二次障がいを発症していた.それでも今いくぶん,いや,だいぶよくなっているのは,社会の常識にかなわないことでも試し続けたためである.脳の仕組みを基準として実験をしてきたのである.その成果を紹介したい.
1.ビジネスは迅速に,をやめる
迅速に成果を上げれば脳は気持ちよくなる.質の良い成果を早くたくさんあげることがビジネスであるから,それができれば給料を待たずともやりがいを感じられる.しかし,過集中はそれをすると誰よりもそうしてしまうため,深夜に新しい開発の案件をふられると喜んでやってしまう.だから休めるように興奮を調節する必要がある.迅速に行うことを二の次にして,丁寧に,休み休み行うようにすれば,脳の興奮がほどほどになるので夜になるとよく眠れる.朝方の生活に切り替わっていくのだ.
2.頭の回転を速くする快楽を控える
頭の回転が速いことには機転が利くという誉め言葉が与えられる.次から次へと思考が展開すると,考えることが楽しい脳はますます楽しくなる.しかし,過集中は回転を速くすることに重きを置きすぎているので,少し控えよう.思考は一日にしてならず,一日で思考できることはうそかもしれない.余計な解決かもしれない.研究者でも数か月で素晴らしい成果を上げる人もいるが,そういう人も含めて大抵は10年で1事実である.10年研究をして誰も知らなかった事実をひとつ見つける,それだけで立派な研究者である.ぱっぱと終わらせるのはもったいない.
3.仕事の合間に積極的に怠ける
誰でも集中が続くのは午前中の3時間であるという.過集中の人はどうかといえば,あっという間にお昼休みという日がほとんどだ.体も心も目の前の仕事に集中するので,やめるより続ける方が楽である.しかし,仕事の合間で休憩しないと,ある日体が疲れ切ってしまう.職場で怠けることは勇気がいる.昼休み本を読みたいけど軽い体操や深呼吸をする方がよい.たとえ効果を信じられなくても,そうしたほうが良い.もっともよいのは何もしないことだ.ただぼうっとする.電車の中で時間を削って勉強する必要は,必ずしもない.
これらのほかにもいくつかあるような気がする.目的は帰宅後も余力が残る生活に変えて,翌日をもう少し元気に,働けるようにすることである.そうするほうが楽しいことを,過集中中だと知らないかもしれない.けれども,過集中も緩和できるし,そうなっても集中力が落ちるのではなくむしろ持続するし,良いことが多い.過集中から回復しつつあっても,失うものはあまり見当たらないのである.
