きょうは少し早く仕事を切り上げ,帰宅して読みたい本に耽った.このような本に浸れる時間をもつのは珍しいことだった.寝るまでに読める時間を確保する生活を送ってきたが,まとまった量を玩味する時間に憧れていた.一日中本を読むことの幸い.読書にうまく波長が合わず,途中で眠くなってしまう休日は悔しくなる.
先月は単行本を三冊も読めた,捗った月だった.哲学書,情報系,文芸書.自分で本を選び合わせ,内容を相乗させるのが読書の贅沢の極みである.北欧の言語,秘密の性質,老いと重力,そういったことをよく考えた月だった.実に満足だ.誰も考えたこともないことを次々考えていると,ほとんどの人が知らないことをたくさん抱えるようになり,国が決めた内容しか教えない教師や,最先端の教授さえ知らない知識のつながりが,いずれは誰かが見出すだろうそのつながりが,はっきりとあらわれたとき,若いのにこんな贅沢を味わってしまっていいのだろうか,と神に疑いさえ挟みたくなる一方で,知的な探究は終わりがないが寿命は有限であるという命題がいかにも怪しく思える.寿命が終わればすべてを知ることになるだろう,天国には過去の偉人が大勢いるので過去の話しを議論できるだろう,未来さえ神に直接きけるだろう,そう希望をもっている.だからいま勉強できなくても分からなくても,あまり気にしない.
ともあれいま研究している数学の成果から,すべての領域を覆える理解をいかに形成するか考えていて,それは可能なことだと結論している.Web開発を仕事にして安月給だが,本と論文と徒歩の散策で使える贅沢な時間に思いめぐるもろもろの発案は,最も人を幸福にさせる時間である.いずれは誰でもおそらく簡単に理解できるようになる.その時期が来ても,いくつかの問題が沸々と起ち上り,考える人を増やすだろう.考える幸福を人間が手放すことは,ありそうもない未来である.現代は考えやすくなった時代である,ただし時間がある人にとってはであるが.
