若い頃の私は人が嫌いで,人間関係を積極的に放棄して生きようとした.しかしそれは不可能な願いで,何人かの友人と絶交したものの,ひとりで生きることはできなかった.今の妻と出会って結婚してこの街に移り住んでから,主に年長の人たちと関わりを持つことになった.それもかなり広い.私の知識や技術,栄養学や情報系の経験を買われて申し出が来るので,甲斐があると感じて充実している.以下が私の繋がりである.
1.某NPO法人
ITアドバイザーとして活動させてもらっている.しばしば理事長のご自宅まで招かれ,出前を奢ってもらい,その代わりにコンピュータのサポートや組織としての情報サービスの設計や導入検討の相談をされる.大きな駅前の気持ちの良いマンションで,ゴールドベルク変奏曲という共通の趣味がある方で,いつも呼ばれるたびに大きなやりがいをもらっている.とても感謝され,大変ありがたく思う.
2.以前勤めていた会社
この街に越してきて初めて働かせてもらった福祉事業所に,今でも仕事をもらっている.ウェブサイトを作って運用する仕事をする代わりに商品券をいただいている.最近訪問した時は,会社の10年もののPCを買い替える話が持ち上がり,予算をもとに製品を見繕ってきた.今度セットアップしに行く.ついでにクラウドに書類データを共有する仕組みとそのマニュアルも作ってほしいと頼まれている.
3.ボランティア
地域の高齢者や障がい者にITを教える活動をしている.私は土曜だけなので,ウェブサイトの作り方を教える講座を担当している.講師役であることが多い.私より若い人はおらず,困難かと思いきや,HTMLやCSSを書けるようになった人が多数現れており,熱心な学習意欲は尊敬している.私なんかより情報技術に詳しい先達も何名かおり,教わって仕事で役立ったことも多く,助かっている.
4.合唱団
シューベルトの歌曲をオーディションで歌って合格して入団した.60名ほどの規模で,私は最も若い方のうちのひとりだ.日頃音楽に触れる動機になっているほか,健康づくりと運動の機会になっている.声が良くなったと言われるし,滑舌に不自由しなくなった.何より歌が身近なものになって生活に幸せな時間が増えた.監督が非常な人格者であり,この人に出会えて良かったと本心から思える.
5.会社の同僚
再雇用で何人か職場で一緒に働いてきた.そのうち,今働いている人は仕事終わりに近くの街に出ようと誘ってくれる.会社の重役を歴任した人物で,経験談が非常に面白い.多方面の文化に通暁していて,特に文学や音楽や哲学に造詣が深い.文庫を交換したり,音源を紹介し合ったりと,今まで職場で文化的な交流ができる人に会ったことがあまりなかったので,職場へ行くのが楽しみになった.
6.気の知れた知人友人
合唱団でお世話になった80代の若き俊英と,ハイキングや演奏会に行くようになった.この人物は本当に尊敬する点の多い人物で,今でも頭脳明晰,声楽の水準を高く維持しており,心身ともに健康で,友情に厚い人格者である.一方,50代の障がいを持つ8年来の友人は,糖尿病を患い,私は彼のように生きなくて良いし考えに影響されたくないけど,生活保護で自足している姿をしかと見ている.
7.教会
何と言っても,私を人間的に大きく変えたのは教会だ.妻がクリスチャンとして育った教団で,2013年のクリスマスに受洗したのがきっかけで,イエスキリストが私と生活の中で共に生きるようになった.今の教会に移ってから日曜礼拝のほか水曜にZoomで開かれる祈る会にも参加し,牧師と話す中で自分の個性や考え方が形成され日々の向上を実感する.教会を引き継ぐ貴重な一員にもなった.
8.天国に生きるOさん
地上に生きている人ばかりが繋がりではない.昨秋に召天した教会員のOさんは,私の人格を鍛えた人物で,今もなお生きている感じがする.私の心でずっと生き続けていると言ってもいい.私を気付かせ,鍛え励ました数々の名言は記録し記憶している.この師匠が残した知恵と行動を共にした思い出は大きな財産である.この人に出会わせた神に日頃から感謝している.来たる死の時も怖くない.
