物を減らしたくなるとき,減らしたいという気持ちが欲望なのか理性的な根源なのか,見極める必要がある.物が少なくて済む暮らしは,確かに軽快で心地良い.望むものなら物が少なく済む暮らしを選びたい.しかし,実際に物を減らすと,目標が失われる.不要な物を多く持つ状態からは脱せても,好きな物や必要な物を多く持つ状態にはまってしまう.結局,少ない物で暮らすことができない.減っても増やしてしまう.
豊かさとは何だろう.物が少ないことが豊かであることは真理だと思う.しかし,好きな物や必要な物が多く手元に残っていることで,楽しみが多い生活を送れる.それは豊かだとは思うけど,物が少ない暮らしの豊かさとは異なる.好きなことをして楽しく暮らす豊かさと,物が少なく物事にとらわれない豊かさが,少なくともあるだろう.分類するなら,前者は興奮性の,後者は抑うつ性の,豊かさだとしてもいいだろう.
私は積極的に楽しいことを増やす半生を送ってきた.一方で,買い物が下手でいつも失敗してきた.だから,ミニマリズムを知って,買う物に注意するようになったことで,無駄な物は処分売却し,いい物を買えるようになった.だが,物は減らなかった.書斎に残った物で無駄な物はほぼないと言える.どれも私の精神を快くしてくれる物だ.活用している物は毎日のように使っている.活用されていない物も年間で見れば必ず使う.
適正量は自然と決まってくる.そうなる物も多くある.しかし,どうしてそれを超えてくる物も存在する.ワンインワンアウトが守れない買い物がある.絶対順守する原則ではないのは承知している.物が少ない状態は,自分が変わる前兆だ,とあるミニマリストは言う.ミニマリズムは自分を変えたい時に実行するものだとされる.ミニマリズムから離れた私は,変われた.今後また停滞して変化を望むようになる時は来るだろう.
