学生が講義に出席する目的は何だろう.単位を取ってさっさと卒業するため.なら学生はなぜ大学へ入ったのだろう.社会に出るまえに箔をつけて高給をとるため.そんな甘い考えの学生でも,大学生になったきっかけは,知識を得て考える力を育みたいからだと思う.この知識情報通信社会ではますますそうだろう.では,教授が考える問題は,どうすれば知識が身に付き考える能力を育む講義ができるかである.
PDLは北欧の講義スタイルでも,シリコンバレーで流行っている手法でもない.単にProblem Driven Lecturingの略である.問題から始める講義のことをいう.問題が立てられれば,その問題は半分以上解決しているというが,その解決策の集合が学問の知識であるから,学問の裏にはその知識が生まれざるを得なかった,時代の大問題がある.問題の源流をたどってもいいし,未来に掲げる提題でもいい.問題と解決が学問なので,講義形式もそうでありたい.
学問上の発見は人間の限界を拡大している.残っている問題は解決策が見当たらないから残っているので,考える品途が他の学問にあることもあれば,どの分野の専門家にもわからないことかもしれない.もし誰も考えてこなかった問題を見つけたら,人類の長い歴史において初めての論題となったら,関連する問題が多く生まれ,つまり解ける問題が増え,未解決の問題が解ける視点が得られる.大きな問題を解くなら,自分で問題を見つけることである.
結局,大学に行く目的は自分で問題を見つけるためである.考えている人が少ない問題を持てば,ビジネスになる.未解決の課題を解決する仕組みを考案すれば商売になる.大学とビジネスは直結しているし,生活や人生にも直接している.問題がなくなることはなく,問題がなくなる完全な解決もない.だからPDLの最後の時間はいつもこの問題である.「あなたの見つけた問題は何か?」
