上長に昨日の面接について報告した.技術では問題ない,と読まれたので,これで駄目だったら人物で落とされる意味になる,と冗談を言いつつ,重要な言葉を頂いた.給料が倍になることは,仕事の成果物も倍になると.品質が良く,失敗点が無いか分からないくらい少ない,そのような成果を常時生産できる人物になるようにと.
現在の事業所で常に警戒していたことはこのことだった.たいへん仕事が楽なのは,自分の能力が高いからではない,給与が安いからだ.給与が高くなるほど,正確な仕事が求められる.正確さだけではなく,組織の人間らしく空気を把握して言動することも,求められる.一般就労したいと思うたび,今の事業所での自分を普通に思ってはいけないと,ずっと思ってきた.とはいえ,一般就労への機会も得にくく,開き直ろうとした日や諦めようと思う日も多くあった.
そもそもなぜ一般就労を目標に働いているのかといえば,障がい者枠での就職先が狭き門だからである.健常者が就職するよりも,いくぶん難しい.就職後に職場に適応してそれなりに成果を上げる人物になれるかという課題もある.一般就労とはそれを考えたことのない人にとっては容易に見えるが,そうではないのである.だから障害年金を受給するしか生計が立たない家計も多い.障がい者が働ける時代になりつつあるが,自分はその先駆となってしまう,そうならなければならない.
帰宅後に冷菓を喰らい,ツナの缶詰を開けたとき,この食品を製造している人の手を思った.缶,印刷,サラダ油,かつお漁,調味料,流通小売.実に多くの企業すなわち労働者が関わって今この家で食べられる.この幸せが百数十円の価値なのである.このたびの転職が叶ったら,給与は今の倍になる.どうやって価値を加えていくか,事前によく考えるようになっておきたい.本が2冊,あす届く.物を買うことで笑顔になる人がいるということ,購買力のない今を申し訳なく思うのだ.
