食べることが簡単な時代だ.そう思うと,食べるものに困る人がいることを思う.日本にも貧困があり,食事の作れない男も少数派ながらいるらしい.彼らも生活保護や調理済食品を買い求めて糊口を凌いでいるだろうが,やはりそれでも,食べることは簡単になった.自分で育てたり獲って来たり殺すことさえもしなくてよいからだ.加工食品も手軽だ.缶詰なんかは上品な食品だと思うけど,大概千円もしない.
食料生産の自動化が進むらしい.田畑の管理,畜産物,漁業までも,熟練労働者が人工知能に仕事を任せていく.農業従事者の減少に貢献するし,減反が不要になり,計画的に生産できるからだ.食品工場でも生産管理が進むそうだ.大きな鍋を攪拌する仕事,出荷前に包装する仕事,生産ラインにおけるさまざまな作業が機械に置き換わり,商品を積んだ自動運転車が出荷する.管理が機械化するのだ.
よく考えてみれば,現場と管理という構図で,機械に代替されやすいのは管理である.管理職は今後ますます機械になる.というのは,現場には運搬や品質や点検という仕事が残るが,管理者は実は機械で良い.むしろ機械のほうが情報をIoTポータルにまとめやすい.一元化しやすいのだ.管理職は責任が重いから高給で偉いわけだが,機械化が進めば現場のメンバーが平等に責任を負い,偉い立場がいなくなり,皆で人工管理職の世話を焼いていくことになる.仕方のない機械とともに働くために.
栄養管理だの健康管理だの資産管理など,管理とつく事柄は,計算機システムの得意なところだ.管理職になりたくない若者が多くなっているこの国の感性を私は信用している.私たちは現場で働き続けたい.手に職,手を動かして作る仕事.それこそ仕事の神髄.出荷から販売までの経路が複雑になっても,現場の人々がそれぞれの専門技能を寄せて現場で働いていれば,社会は流れ,食にありつける.自動機械と共存した世界の到来を待ち望みたい.
