文字が好きで,文字に囲まれた部屋で,文字列を好きに作っていく.自分の今いるところだ.この部屋には,科学雑誌の背番が4年分,家には本が600冊は優にある.公開中のウェブサイトの数も50を越して,自分が書いた文字列が実際に読まれ,喜びを禁じ得ない夜がある.ある部録は,日本全国から毎月1,000件近いアクセスがあり,いくつかの検索語で最上位に来る.そう,検索されている.
自分は高校生で文学を書いたことで,ウェブと共にある人生を生きようと思い,大学も図書館学と計算機科学を専攻した.そこではあらゆる学問の基本を学び,司書課程では分類理論にはじまり,整理術やデジタルメディアとの付き合い方もしばしば考えた.学生として様々な図書館にも行った.おかげで,物理学か文学か哲学かで迷った大学選択は,最も満足した方向に進めたと思う.
十代のころに比べたら,社会人の今は好きなことだけ勉強できるし,それで職能が増進し,雇用も延び,給与も続く.それだから夢で描いた以上の暮らしである.好きな本に囲まれ,科学雑誌を自炊する時間は快い.ウェブのデザインとコンテンツを作る時間は何の苦でもなく,それが仕事でも同じことだから,大して疲れない毎日.恵まれている.神さまありがとう.
多感な時期の悩みは去り,日本語を数十語くらいしか話さない毎日だが,本当に満足しているし,幸せだし,希望も大きい.何ら不満がない.本当にいい人生だと思う.今時こんなことを心底思える人間がこの社会にどれほどいるか考えただけで,自分は数万人に一人の幸運な男である気がする.もっと大変な苦しみを感じて生きている人がほとんどだとすると,彼らのためにウェブでできることがないか模索してみて損はない.
