今の職場で働けて幸せに思う.こういう人こそが信頼される人なんだ,と思う人が上司であるうえ,先輩方もスマート.今まで世の中をよく知らなかったのは,自分がいちばん見劣りする環境に自分を置いたことがなかっただけだと分かった.優れた人々が集められた組織に自分を置き,自分の出来の悪さとひとつひとつ対面してつぶしていける環境にいられる幸せがある.もう自分は,人生で人間を見下したり軽蔑したりすることはないだろう.
自分のいた環境は何だったのかとも思う.思えばみな甘かった.なぜかといえば,障がい者として認定されるほど重病を負っているものだから,みな気を遣って笑顔で接してくれていた.その気遣いは非常に厚いものだった.誰もがそうだった.疲れてしまうほどだったはずだ.会う人みながそうだったので,自分はどうやら認識を誤ったらしい.自分に向き合って実力を矯めることなど,考えもしなくなっていた.
今の環境は,みながそうして経験するはずの社会人コースに乗ったことになる.この自己研鑽を,大卒の同期は10年前から経験してきた.10年間.生涯賃金にして数千万円の差異.10年間で磨いた一人前の能力.自分は今から始めるしかない.10年間の出遅れは,経済的には充分だと思うものの,職能の点からみれば,大いに劣等であり,ウェブの専門技術では満足いくキャリアでも,社会人の基礎能力からすると,大いなる欠陥を持つようにみえる.
自分は自閉症で,人間の基本的素質が,一部育たず壊れている.社会人の基本で,いつも躓く.自分が本当にそこで躓いていることを今の職場で初めて知った.この人が上司であると認識するまで半年かかり,自分がその人の部下であると意識するまでに更に数か月かかった.そのくらい鈍いのが自分だ.恐るべし.自分の置かれた環境が甘かったせいにするのはわるい.職務中は自己研鑽に努め,能力の不足を補填する,どうやらそれが働く社会人の実像らしい.
