秋の懶惰な午前には,ポエングに横たわり意識してアイデアの発散と収束をゆっくりと繰り返す.整理されてくることが生命の基本的性質であるからか,整理されるほど活力が湧いてくる.在宅仕事のモチベーションを上げるには,この方法が一番.いらないものを捨て去り,可能性のあるものを仕入れ,再び篩にかけて削ぎ落とす.繰り返すほどアイデアのポットは新たに先鋭になり,打ち合わせの場に持ち込める.
ポエングでの脳内整理はしかしながら路傍のアイデアも引き連れる.あの駅からの道を歩きたいとか,あの路地の裏に回りたいとか,あの橋で川面を眺めていたいとか.どこかに行きたいという願いである.今の平均的賃金より最低賃金での労働期間の方が長いので,どうしても昼間の街の散策の思い出が意識に上りやすい.自分を構成している記憶はまだ,転職先のホワイトな環境以上に,就労継続支援事業所での経験なのだ.
寒く涼しくなり,夏の賑わいが消えている.毎年秋が訪れる際には何か感傷的になる傾向があり,緑が枯れることを色づくと言って愛でるのは何故なのかとか,例年気温が下がると創造的になる理由がわからないとか,謎は多い.来週には11連休の秋休みが控えていて,コロナ禍で自宅にて過ごすことになるので何を作ろうかと思案している.自炊注文した電子書籍が届く10月半ば前に,読書を進める方法を考える課題もある.
惰弱な精神を鍛え直すと考えると,本を読んで眠くなるようではいけない.でも仕事も読書も急いで行うことではない.むしろこの敏速な情報通信時代こそもっとゆっくりと考える習慣が求められているように思う.イノベーションだって早ければ良いものではない.ゆっくりと雇用を創出させ産業を立ち上げる方が,確実に人々は幸福に近づく.怠惰で鈍間な思考習慣を涵養する秋にしたいとつくづく思う.
