今まで一匹狼の外れ者的な人生を送ってきた私にとって,年功序列で上下関係の明確な今の会社に勤めるなんて想像だにできないことである.私の家系は公務員が多いのだが,その例外なく私もみなし公務員として採用され働いている現実である.私の過去を知る人なら驚愕するだろう.私自身この職場に就職し人生の価値観が大きく変わった.この変化について記す.価値観なんて変化してなんぼである.
1.お金持ちに憧れがない
私の会社は年功序列で,若輩者がいくら組織に貢献しても,給与には反映されない.代わりに安定した定額が毎月振り込まれ,大きな事件を起こさなければ首にならない.お金が動機の人なら頑張れない職場だろう.この職場には高度で多様なスキルの持ち主が集まっており,定年後仕事を作ることを考えた時,この職場で揉まれ鍛えられたほうが後になって仕事につながると強く感じる.だから今も勤続している.
2.決して有名にならないよう行動する
私の半生には有名になる機会が幾たびかあった.メディアに登場したり,テレビ番組に呼ばれたり,画期的な論文を発表する機会もあった.しかし,いずれの機会も自ら潰すことにした.有名になってお金が入ってきても虚しいだけだと思ったからだ.私の知的探究心は有名になることではなく自分の関心を満たすことが目的だから,付随するものが多いほど純粋な気持ちの邪魔になる.だから有名にはならない.
3.人生には諦めるべきチャンスがある
チャンスはいくらでもある.転職のオファーなんて毎月のように来る.玉石混交であるが1年に2件くらいおっと思う条件の会社からお呼びがかかる.しかし,今の職場を続けることを選択し続けているのだ.理由は簡単で,お金ややりがいを動機に働いていないから.自分の能力が社会に活かされなくてもいいと思っているから.活かせるほど能力が高くない.活かしたところで得られるものは大したことがない.
4.時間の充実より堅実さが重要
人生の時間には無駄がある.今の仕事は待ち時間が長い.本を読むには気が散り,外で散歩もできず,何か考えて作ることも許されない.もし時間を大切に生きるなら,今の職場は合わない.人生は時間を充実させ続けることが大切なのではなく,減り張りをつけてたまの充実した休日を過ごす程度がちょうどいいのだ.堅実に生きることは私には難しい.しかし世の中のほとんどの人が堅実を是として生きている.
5.自分を殺して信仰に生きる
自分の思うままに歌っては合唱にならない.指揮や伴奏に合わせるのでもない.自分を殺し周りの息遣いに合わせて初めて合唱が成立する.個性が尊重される現代だが,自分を滅して行動する人の多い時代を経験してきたはずだ.自分を主張する前に自分を抑えているほうが,この現代では珍しく個性的である.自分を砕いた神さまを思い起こす.人間は数千年間経ても変わらない.真理もそう変わるものではない.
