今は静かな夜である.午前にボランティアの集まりがあり,参加が終わると,注文していた建築雑誌が届いたので,3冊を眺め,なるほどあまり頭を使わなくても読めるものだなと思った.そのあと本棚を整理し,セネカを文庫で再読.午後に一度眠くなり,2時間ほど就寝.起き出すと日は暮れていて,十割蕎麦を茹でて食し,もう一度建築雑誌を読み漁る.郵便受を見に行くと,雲の多い空は暗く,辺りは静かだった.
主が降誕して2,000年以上過ぎた.人類は進歩と退嬰を併せ持つ方向に変化した.豊かになった面はある.美味しいもの,綺麗なもの,快適なものは,特に普通のことになるまでに普及した.これは大きな進歩だと思う.今はもう飼葉桶に嬰児を産み落とす産婦はいない.凍てつく寒さの中を暖を求めて彷徨う旅人もない.生活が改善したことは特筆すべき進歩だし,その分雇用が創られ経済も大きくなった.
しかし,精神の健康は損なわれたままだ.主が誕生した時代とそう変わっていない.これは推測になるが当たらずとも遠からずだろう.もちろん20年に近い教育期間が普通になったこともあり,悪い所業に手を染める人は減ったと思うし,知識を求める人は増えたろう.哲人のように英知を求めて生きるような,好ましい生き方を選び取る賢明な人も増えたと思う.そんな人が社会に増え,普通になれば,社会は進歩したといえる.
主は今でも私たちの社会を見守っている.そして,主は今も導いている.だから主が改善しているこの時代を喜びたい.私たちが改善しているのではない.私たちが進歩しているのでもない.主が私たちを改善し,主が私たちを進歩させている.だから安心してこの変化に身を委ねたい.この静かな夜にも,主がこの世で働かれ,片隅で起こる問題を解決に導き,全ての人に恵みが等しく注がれることを祈っている.
