世には便利な本が出ていて,それを探り当てれば得をする.探り当てる知恵を欲する人もいるだろう.最近多く出版されている図鑑系や大全系の本は便利であるものが多いと思う.私は子どもの時から辞書や事典を好んで読んできたので便利だと感じるだけかもしれないけど,これだけ図鑑や大全を冠した書籍が次々発売されていると,ウェブでは読みにくく,本であるからこそ見つけやすく読みやすい特徴があるのだろうかと訝しくなる.
辞典や辞書は検索性からCDなどの記憶媒体を付属して販売されていた.20年くらい前だ.当時は画期的だったが使ってみると意外に探しにくかったが,原因はおそらくWEBだったからだ.リンクをクリックするたびにひとつしか見られなかったのだ.本なら1頁を眺められるので,WEBより本のほうが総覧性が高かった.延いては探しやすいのも本だった.これを思い出した時,図鑑や大全が本で流行っていることを納得した.
図鑑や大全は,編集に時間がかかる本である.1冊数年間かけてまとめるのではないか.どの本も個人がひとりで書いており,何冊も大全を出版する強者もいる.さらにテーマが被りやすいため,一度出てしまったジャンルは余程の個性を出せない限り扱いにくい.図鑑や大全は一度出せれば儲かるけど,一度出版されてしまえば関連本も売れなくなると思われる.出版業界の最終兵器の様相を呈している.
便利な本は,全部を読まれることが稀な本だと思う.必要な知識を検索し参照するための本だからだ.WEBも便利だけどそれより便利な本.そもそもWEBはそんな強敵が現れた以上,それら便利な本に勝る設計をすべきで,アメリカなどで情報建築の最近の話題にもなっている.あらゆる点で本に勝るメディアとなるべきなWEB.まだフロンティアが遠くに見える.奥行きの深い分野で働けて幸せだと思う.
