義務教育は種蒔きで,蒔くほど大人になって学び直せる,その障壁が圧倒的に下がる.だから大事だよという話を聞いた.私は何の疑問もなく義務教育を修めた人間だ.定期試験で5科目484点を下回ったことがなかったし,高校入試でも本番で497点を叩き出し,県で最難関の高校に易々入れた.入りやすかったので辞めてしまったが.辞めてしまっても国立大学に合格できたし,理系の大学院で修士も取れた.義務教育は大きい.
私は今まで勉強で困難を覚えたことのない人間だ.多くの人はハードルが高すぎてやる気を失う分野があるという.あまり語られないが,ほとんどの人はそんな挫折を経験しているのだろうと思う.でも私は今のところそんな分野に出会ったことがなく,また既に本当に多くの領域をカバーできる読書をしてきたと思う.苦手科目がなかったからか,学校で習わないことも独学し,今仕事になっていることもある.独学習慣も養えた.
一応,今まで勉強した領域を挙げておくと,造形,水彩,翻訳,言語,哲学,宗教,数理,美術,投資,声楽といったところ.これに大学で専攻した図書館情報学と,大学院で専攻した生物分子科学を混ぜれば,大体私の領域になる.もちろん,仕事になっているウェブの知識も大きい.身につけた知識を捨ててまで仕事にしたのだから.まだ知らない領域があることは知っているがこれ以上は広げない.充分暮らしが豊かだからだ.
義務教育で修めた内容が,それ以降の長い人生の豊かさを決定づけるというのは決定論すぎるが,でもそういう面は強くある.いくら情報が入手しやすく知識が安売りされている時代とはいえ,それを受けて残せる人は実は少ないという事実.本当に役立つ知識や情報は,自分の外にはない.自分の受けてきた教育にある.もし自分の中に知識を残したいなら,自分の受けてきた教育と結びつけて展開させることが常套手段だと思う.
