読みたい本が尽きない.しかしよく反省すると,タイトルが魅力的なだけで,本文を読みたいと感じているのではないことがわかる.もし本文テクストを読みたいのなら,常に本を開いているはずだ.でもそうではない,タイトルを眺めて過ぎる時間が相当ある.一度読んだ本,少しだけ拾い読みした本,粗筋を確認しただけの本.タイトルからそれらを連想して満足して終わるのだ.しかしこの習慣には利点もある.
人生の時間をどう使おうか考えている.取り組みたいことはいくつもできた.生涯の趣味である.それらを楽しめればそれで幸せだ.しかし,そんな享楽的人生で良いのかという考えもある.知識を得て,好奇心を持ち続けて,いつまでも終わることのない探究心を育んでいく.これは大変真っ当な生き方だと思う.大きな買い物は必要ないし,時々人生に大きな影響をもたらす著者に出くわす.財産となる出会いだ.
本のタイトルは,惹きつけて読者にする力を備えている.本を売るために最も買い手に訴えかけられる文句だから.その惹きつけは買った後も永続するので,蔵書を持っている人の動因になっている.本棚とは,今まで自分が惹きつけられた文句の羅列である.自分の関心や嗜癖が現れる.他人の本棚は楽しいが,自分の本棚は幾分憂鬱である.教養があるほど,本を多く持っていることが恥ずかしくなる傾向はある.
本といかに付き合うかは人生で難しい問題のひとつだ.本への投資を勧める人は大抵著述業である.本を買うことがよしとされる理由は,高い教育を受けた人には自明だが,知らない分野の前では鴨葱である.今月また本を買ってしまった.貧困や社会学の本である.読書は人生の幅を広げる.話題にもでき,尊敬さえされ,ましてや自分で新視点を得た時の喜びといったら!読書は麻薬のうち,それ以上でも以下でもない.
