夜就寝前になると,自分の意識が変わる.感覚も変わる.昼間透明で何もない精神に,まるで己が物質であることを思い出したかのように,具体的な感覚が与えられる.高校2年の時は,夜だけでなく昼もこの感覚が残る日もあった.しかし,次第に昼間は透明になり感覚は失われていき,夜のみの現象となった.薬を飲んでいるせいもあるだろう,具体的な身体感覚は,服薬して初めて齎される可能性もある.
昼間が無感覚すぎるのが問題だ.どうして昼間は具体的な身体感覚を持てないのか.どうして意識が身体と接合し,所謂地に足がつく感覚を,普段失っているのか.就寝前に感じるこの感覚は,睡魔を共にし,朝起きると忘れている.朝は爽快であるが夜の具体的感覚は忘れられているので,実際生きている心地がしない.生きていることを感じられる時間は,就寝前の1時間くらい,そんな毎日なのである.
最近発見したことは,文学を読んでいてこの具体的感覚が戻ってきたという経験である.それは午後の昼下がりであった.嬉しくなりその本を繰り返し読んでみたが,感覚が得られたのは最初1回目だけ.1回しか効果がないわけではないと思うけど,言葉によって感覚が彫り起こされる感覚があったので,言葉で好きなことにコミットした時,具体的身体感覚が戻ってくる,そんな気がしている.
具体的身体感覚が重要なのは,自分が存在していることを直接感じられるからだ.何者にも代え難い幸福.きょうは好きな洋服の動画を見た後それを買ってみて,着る姿を想像していたら,楽しみが抑えられなくなってきて,具体的感覚が得られた.服薬後に経過した時間から考えると薬の影響もあるとは思う.この感覚が常に感じられれば生きるのが楽しくなるだろうに,模索すれば骨が見つかるかもしれない.
