先日行った代官山の蔦屋書店で,気になって買った本のうち,6冊は料理の本だ.レシピではない.むしろレシピを不要にする本質論,科学的料理論,料理人のノンフィクション.どの本も親しみがわく.その親しみは,文学に対して持っているそれとは質が異なる.毎日食事しているので,毎食何らかのものを調理している.その行為をレベルアップできると思うと,触手が伸びる.今よりおいしいものが作れれば無敵ではないか.
本質論の本では,塩・油・酸・熱の4つに絞って料理の本質を魅力的に語られる.ちょうどキッチンに,岩塩・オリーブオイル・バルサミコが常備してあり,他の調味料はあまり置いていないので,この本はちょうど良いと思うと同時に,台所の調味料は必要十分であると感じられた.科学的料理論の本では,風味の作り方や雑学が詰まった本で,本質論を読み終えてから読むと大変知識が広がり面白いこと必至だ.
料理人の本は,文庫で3冊買った.職人にとっての知識観だったり,味覚を創造する四面体モデルだったり,料理人に対するインタビューだったりと,どの本も個性的な内容があり楽しそう.普段やっている素人仕事に対し,プロの職人がコツを伝授したり職人の生き方を示してくれるのは,親しみが強くわく.プロとして職業にしている人の経験談は必ず面白いと感じる.読み進めるのが楽しみでワクワクしている.
今まで知っていたつもりの世界や,興味を注げないでいた世界を,もっと広く,もっと理解できる形で,もっと見通せるように提示する本は,概して価値が高いと思う.今は料理の世界を深めたいと思っているが,それだけで日常が楽しくなりそう.そして,料理の世界に慣れてきたら,また他のよく知らない身近な世界への扉を開きたい.そんな世界を見つけるのは簡単である.私の場合は,植物や花卉や昆虫になるだろうか.
