自分の人生で行った選択が良かったと思うことは簡単である.失敗したと後悔することも簡単である.選択によってもたらされた現在が良ければ,その選択は良かったと思うし,その反対も同様だ.選択に良い面を見出せる人は,どんな選択をしてもそれを良かったと思えるので,選択に失敗がないと言える.そういう前提であるが,私が最も良い選択だったと思うことは,高校の転学である.これで人生が大きく変わった.
相当な進学校だった.県内で最も勉強ができる人が集まっていた.その中でも私は成績がかなり良かった.でも,校風が合わないと言い訳をつけ,その場を離れた.どうしても離れたかった.理由はたくさんあるので書かないが,離れたことで私は無上の自由を獲得し,その後の人生を大きく自分のものにできた.充実で精神を満たし,困難を引き受けて対処する態度も養えた.進学校から離れることが,最良の選択だった.
私は27歳で結婚した.無職・無収入・無貯金の私と結婚してくれた.今36歳である.もし進学校にいたままだったら,今頃婚活し,年収や会社名などのスペックで厳しく査定され,私を本当には愛さない人と結ばれていたかもしれない.私は27歳の時受洗したが,それ以来生活の充実度が格段に上がり,障がいも軽減した.進学校を出ていたら,就職や収入は充実しただろうが,結婚や治療では失敗していただろう.
高校は将来に向けて重要な時期だと言われるが,そんなのは枝葉末節なのだと思う.自分で努力して進学校に入ったのは良かった.離れても勉強を継続したことも頑張った.しかし,高校に在籍し続けなかったことは,就職の優位さは失われるにせよ人生に及ぼす影響は大きい.今人生をこれ以上なく充実させている私である.どの道今の状態だったとは思わない.私の選択が今の私である.それが良かったのだ.
