眠れない日がたまにある.といっても深夜2時を過ぎると知らずに眠ってしまうが,それまでの数時間を眠れず過ごすことがある.つい10年前は眠剤を飲んで眠ろうとしていたので,それがない今の健康は奇跡的だ.今は薬代が月千円を割り,症状も消えて快方へ向かっている.その回復に寄与した眠くなる本を5冊挙げておきたい.これらの本をベッドに入る前に読んでおけば,神経が疲れて眠くなること請け合い.
1.幾何学基礎論,ヒルベルト
厳密な論理で貫かれた本書は,ユークリッド幾何学を公理化し体系づけた,数学史上画期的な論考.論理を追っていると,当然さと厳密さで理性が試され,数学科を出ていない人間には,どこかで疲れて眠くなってしまう.論理的な考えがわいて興奮している夜に読むと,その興奮が冷静な論理に置き換わり,眠気を催す.
2.創造的進化,ベルクソン
生命の進化を述べたノーベル文学賞受賞者の代表的論考.ベルクソンの文章は論理的骨格がはっきりしている.その一方で修辞的装飾も多く,一文が冗長だったり表現が緻密で回りくどかったりするので,読んで内容を追っていると眠ってしまう.文章に眠りが織り込まれているかのようだ.
3.中世の秋,ホイジンガ
ルネサンスが起こる前の沈黙の中世についての研究書.欧州の古き良き暮らしぶりが瑞々しい文体で論述される.貴族の他,農民や街の生活についても言及されていて,当時の情景がありありと思い浮かべられる.想像力を必要としたい夜におすすめ.イメージが描かれた時にはすでに眠っている.
4.動きすぎてはいけない,千葉雅也
2013年に日本で出版されたドゥルーズの哲学書.一昔前の文体を採用し,引用も多く,読みやすい本ではない.しかし,新しい概念が各章で提案されており,テーマもネットに繋がりすぎてはいけないという極めて現代的なもので,読んでいて楽しい.でも長く読むことはできなくて困っている.
5.眠られぬ夜のために,ヒルティ
枕頭の書といえばこの本.クリスチャンにとって考えたいことは全て考えてあり,悩んだり考え事をしているときは答えが載っている.信仰による安心をもたらしてくれる本.日毎に1ページにも満たない短い文章による構成で,数ページも読めば異論のない結論が得られ,すぐに眠れる.
