私には欲しい物がなかなかない.食事の美味しさにはこだわりがない.どこかへ旅行したいという思いもない.ただ生活を幸せにするには,次の5つがあればよいのだと考えている.これらの物を使っていると幸せが訪れる.とても単純な話だ.価格は関係ない.人間,幸福を得るには安上がりでよいのだと思う.今までそんな人を多く見てきたので,奇妙な見方ではないと思う.幸福をお金で買うには,自分を最高に幸福にしてくれる物を知っていなくてはならない.そんな物がいくつかあれば,人生は成功である.
1.キーボード
PCは私を幸せにしてくれる.では,PCの何が幸せにするのか.簡単に文字列を作れるところだ.キーを押すだけでいいのである.この単純で且つ言語の深奥に迫る仕組みが,私は堪らなく好きだ.というのも,検索窓に入力すれば,多様な言語で書かれたページを得られる.言語切替を利用すれば,一組のキーボードであらゆる言語の文字を入力できる.1つの言語の中だけでも無限の思想と組み合わせを試せるのに,それらが手軽に可能になる.使い始めて30年近いが,飽きたことがない.
2.ノート
罫線や余白に無限の可能性を感じる.文字を書いてもいいし,絵でも図でも,楽譜でも立体でも,アイデアでも目標でも,何を書いても歓迎してくれる.そしていつまでも保存できる.コピー用紙でもよい.自由の象徴である.真新しいノートはいつも私の好物で,文具店に行くと気持ちが浮かれる.高価なので買うことはあまりないけど,贈られたときは本心から喜ぶ.ノートにもいろいろな種類があり,紙質や罫線に特徴があるから,気に入ったノートはリピート買いしている.
3.ペン
LAMYを4本使っている.でも正直何でもよい.インクの管理が難しい万年筆よりも,ボールペンが良い.白紙に何か記す行為がとても琴線に触れる.字は下手だけど,手が生み出す独特の筆記体,それらが意味する言葉の並びと落ち着く感情の反応が,人間の神秘に触れる行為である気がして高揚する.私は基本的に文字が好きで,その形状や現れ方にいつも関心を払っている.文字は知的神秘だと思う.Vコーンというボールペンを20本買った.明日届くので非常に楽しみにしている.
4.辞書
自動翻訳で便利になったこの時代だが,辞書は序列的網羅的なのが良い.しかもハンディに収まる.私は20か国語の辞書を書斎に持っている.まだ全部に目を通していないけど,この言語を使っている人たちがいるという事実が興味深い.検索して現れたページを読みこなすときにも,自動翻訳の力も借りつつだが,辞書は活躍する.知らない単語が実にたくさんあり,それらを使って生活している人たちがいることが,言語の存在を今も保証しており,それを手軽に確認できるのが良い.
5.文庫
文字の塊,本.その廉価版であり片手で持てる大きさなのが文庫だ.サイズが一定で収納性も高く,多く保存しやすい.私は単行本を滅多に買わない.文庫の世界が広いことを知っている.タイトルによってはすぐに廃刊になってしまうことの多いこの文庫という商品である.読みたいと思ったらすぐに購入している.妻も文庫が好きで,文庫の良さを分かる人と結婚したいとも言っていた人だ.素敵だ.そんな妻も私を最高に幸せにしてくれる存在である.妻がいてくれて私は最高に幸せだ.
