自分で書くものがつまらないと思うときがある.みたいなことをつらつら書くと,それこそ読んでみたい文になる.という作文の手法がある.情熱をもって書いた記事は暇なときに読まれ,暇なときに書いた適当な記事は情熱をもって読まれるのである.こういわれると書く気をなくす.が文章の日常はそのようなものだろう.しっかりした研究を成し遂げても,社会で有用な概念に結びつくまでにさらに時間を要する.有効な概念は早く広まってほしいものだが,Webだけでそれを成そうとするとWebであるのに時間がかかる.
実際,問題を抱える人が多いとき,その時代は学問を欲する.しかし,大学が就職を目的にしたとき,逆に,学問を嗜む関心,態度,方法は多様になった.Webで手軽に識者の要約が読めることで,抱える問題が氷解して一段と自由になった人が増えたのではないか.論考が無料で公開され,私たちは抱える問題を読み替えることで,先の見えない状態を変質させる.世の中の動きは資源の移動とことばの問題.新聞や報道から離れて暮らせば,人生は自由になれる.先の見えない状態,とは誰かの宣伝文句にすぎなかったろう.
我が家の電気代が月2,000円程度だと話すとどのように暮らしているのか疑われるが,電気をあまり使わないで暮らしているだけである.当たり前のように広告らに形成された知識は,常識とは限らない.新聞や報道に触れなくても,私たちは追求し尽くせない,知り尽くせない事柄でいっぱいの世界を生きている.立ち止まり考え,さらに立ち止まる.こうした人々が世の中をみて,少しずつ変え,偉大と呼ばれる.このことは,近代以前から変わらない,現在もあまり変わらない,人間集団の法則である.ずっと立ち止まろう.
