欲しい物ができた.Yチェアである.ハンス・J・ウェグナーの20世紀の傑作と言われる,ロングセラーの椅子である.価格は10万円弱.書斎には椅子が3脚ある.IKEAのポエングを休憩に使い,普段は昔リビングにあった同じ椅子2脚を使っている.なので椅子には数千円しか投資してこなかった.ここにきて椅子に突然10万円投資するのだから大きな変化である.同じ2脚のうちの1脚を処分するか,4脚全て置いてもいいかも知れない.
お金を使おうと思うのだ.そして自分に必要な物を知り,それに使えるようになろうと考えたのだ.お金をただ無目的に貯めて増やしても,人生は深くならないと感じる.世界には多くの名所や優れた物財が数多あるのに,その一角も知らずに生きてしまうのは豊かであろうか.せっかく触れられるのならそれらにお金を払って触れた方が,世界の見方がより豊かに変わっていけるのではなかろうか.お金を使っていきたい.
投資も豊かな経験にはなった.銘柄選びのために産業構造を調べたり,お金が簡単に増減したり,投資とは将来を長期的に予想するゲームであることを知ったりできた.しかし,投資で増えるのは,経済知識と長期的視点の他には,お金だけだった.投資は結局お金が目的のゲームだった.お金を多く持つことにはしかしながら私は興味がない.ゆえに余った分を寄付献金してきたが,自分を広げる物を見つけようとしていなかった.
自分の世界を豊かにする物とは何か,これからは真剣に探してみようと思う.社会人として10年.一人前に働いており,誰にも何も言われない.給与の使い方を真剣に考えるなら,自分は何を欲するのか知るようにしたい.自分の好きなことや得意なことに沿った豊かな物は,私の知らない世界に多くあるだろう.私はそれらをほとんど知らない.まだ開拓の余地が大いにある人生だということになる.まだ生きる喜びが多くある.
