今の職場は,あまり詳しく書けないが,公的なところだ.税金で運営されている.私の父は新卒から定年まで教師で,私も公務員になるものだと考えて育った.高校生の時に自分の本当の人生に悩み,高校中退など迷いを重ねたが,今こうして安定して働いてみると,落ち着いたところに落ち着いたと思う.父も安定を勧めたし,私も手に職をつけようと技能士の資格を取得している.今の職場は,この両方の声を満たす職場である.
自分のやりたいこと,夢中になれることで働こうと,考えすぎてきた.今の仕事も嫌いではない.しかし,私にはやりたいことで働こうとするより,安定した生活や国のために貢献したいという思いがある.中学2年の時,父と初めて霞ヶ関に出かけ,皇居外苑を歩いた時,私は今までいい思いをしてきたから,将来はその恩返しとして国のために働いてみたい,そう感じたものだった.今もその光景は脳裏に焼きついている.
それで国立国会図書館に勤めたいと思い,大学で図書館情報学を専攻した.狭き門すぎて早々に進路変更し,プログラマとして身を立てようと考えた.好きな文字や記号で生計を立てられたらいいなと,社会人になりたての頃は夢のような毎日を送っていた.小学生の時からデータベースを作っていたから,データベースの専門エンジニアになれると思っていたし,実際なれただろう.でも,私は今の職能と職場の鞘に収まった.
2ヶ月前,新橋に宿泊した朝方,霞ヶ関まで散歩した.その光景は中学生の頃とそう変わらず,むしろ現実感が増し,あるいは夢のようだった印象が消えていた.私は今まさに,国に役立つ立場で働いている.人生は数奇なものだ.どんな出来事を経ても,求めていれば収まるところに収まるのだ.私はそう偉くなることを望まないので,そうなることはないだろう.でも,中学生の時に心に念じた動機をこれからも忘れたくない.
