ひとつの達成で満足してしまう傾向が私にはある.それで続かないのだ.美術学校にいた時,作った立体が講師に激賞されたことがあったが,その7月を境に私は美術を辞めようと考えるようになった.満足したからだ.生涯に渡って美術建築の道でやっていこうと思えるほど,私は丈夫ではなかった.ちなみにその時の同級生は,私の知る限りでは工科系建築の大学院を出て,公的な住宅の団体に勤めている人もいる.すごく立派だ.
1回のベタ褒めで満足してしまう傾向は,おそらく中2の時に漢検1級最年少合格で表彰されたことがきっかけだ.それ以上ないからだ.満足するしかなかった.私は完璧主義ではないのだが,1回の達成でそれ以上ないと思わされたこの経験から,ビギナーズラックを何度起こしてもそれ以降が続かなくなったことが本当にたくさん体験させられた.1回の成功それ以降の道が,全く未知で見えないので,満足して辞めてしまうのである.
よく考えれば,成功して以降のことなんか,誰にもわかるものではない.成功したら成功し続けなくてはならないという圧力を感じる人もいれば,確かに喜びを味わって細々続けていく人もいるし,私のように足を洗って辞めてしまう人もいる.私の場合は満足が伴っているので厄介だ.その分野で足跡を残せたと思い込めてしまうからだ.成功したら辞めてしまうという傾向を,そろそろいい加減払拭しなければ,私の人生に関わる.
今の職場でも,入社2年目で,理事長賞をとったほど,功績を収めた.いろいろなメンバーと協力して取り組んだおかげだが,皆,私の貢献が大きかったと口を揃えるので,私は成功と思って良いと考えていた.しかし,その後は退職との間で葛藤を過ごすことになった.達成したら離れたくなる.この傾向を,もう心の内だけに収めないと,何も続けられない.今後何も達成しなくても,この満足は深まっていくとの確信がある.
