今これを記しているのは深夜0時台だ.今日は有休でIKEAに行く日だ.興奮で全然眠れない.IKEAへの沼りようは根深いもので,今最も好きなブランドであり,最も楽しい時間の使い方になっている.IKEAに行く日は前日から眠れないことは何度も経験している.GABAのサプリカプセルを飲んだが効かず,ヒルティの「眠られぬ夜のために」を繙いても,今夜は眠れないでいる.どうしたものか,この興奮が冷めないままで困る.
考えてみれば,この興奮のために私は働いているのである.このような興奮を得ることにこそ,お金を使っている.だからこの興奮は味わい尽くさなければ勿体無い類のものだ.なにしろこの興奮のために労働に時間を捧げ,その対価であるお金を商品に費やすのだから.商品そのものなんてどうでもいい.すぐに冷めるだけだから.それよりも,この興奮を味わうことに最上の価値があるのだ.今夜は高級な夜なのである.
なんと虚しいことか.この興奮のために睡眠が崩されるとは.誰でも眠れない夜はあるという.その内実は大抵は興奮だ.ドーパミン過剰かセロトニン過剰だ.その持続時間は3日と持たない.だから人間はまた買わなくてはならなくなる.買った物を忘れ果て,買った時の思いなど削ぎ落とし,何をいつ買ったかさえ思い出すことなく,新たに物を買い求める.なんて悲しいんだろう,人間とは.なんて不憫だろう,この社会とは.
最近嫌なほどこの資本主義の虚しさを考えている.ミニマルな生活や節約や物欲を消す方法の動画ばかり見ている.買うことが虚しくてたまらない.買うことは生きることのごく一部のはずなのに,物を得ることへの期待が一時的に強い興奮を与えてしまうので,他の何より手軽に最優先しなくてはならない行為だと錯覚させられている.そう,幻想だとわかっていても錯覚から抜け出すことができないのだ.哀れな脳よ,眠りたまえ.
