今の38歳ながら,老後を想像する.そして,これが人生だったのだろうと絶望しかける.箸が転げて笑っていた時代,チョコレートを齧って幸せだった時代,恋人と手を繋いで歩いた時代が,懐かしく思い出されるのだろう.老いてからそんな時間を作れるのだろうか.人生から文化の装飾を除いたら,ひどく見窄らしく平凡な時間だけが残る気がする.だから予め教育され文化を学んできた.老後を悲惨から免れる保険だったのだ.
1.気力が落ちる
何も考えない人間なら,好きな時に頭を空にし,興奮の高揚に生きられるように思う.でも,認識の生活を送り,仕事に責任を持って職業人として生き,世の中や物を知るようになったらば,果たしてまた頭を空にして高揚の中を生きられるだろうか.やる気に満ち溢れるのは若気の至りだが,心が熱を帯び,軽く快くなれるだろうか.それとも,曇りの日のような元気が出ない日々を送ることになるのか.ましてや目標や軸が失われたら.
2.興味が足りず忘れる
歳をとると興味が欠乏するらしい.物忘れの原因は興味が欠乏した生活を習慣にするためらしい.私は興味が失われた生活というのを生まれてこのかた経験したことがない.最もつまらない時期も,何か好きなことを考え出していたものだし,結果的に自分で作り上げる力になっていた.歳をとってからの暇は,果たしてそんな作り出す力に変わるようなものなのか.それとも考えついたことも作ることさえも忘れ去ったまま生きるのか.
3.視力など身体機能が衰える
老眼や白内障は私も避けられない.まず本が読みにくくなり,ウェブもスマホも使いにくくなる.そうすると,私の生涯最大の楽しみである文字を読むことが楽しめなくなる.自分の中核を奪われてしまったら,どう生きたらいいのだろう.何か別の楽しみも用意しておかねば.それは音楽や散歩やカメラのような,文字を使わない趣味である.いずれは聞こえなくなり歩けなくなり電子機器に疎くなる.その時までの楽しみである.
4.支出が減る
老後を迎えると皆押し並べて生活費が減るらしい.老後の蓄えを計算する若い人は,これを踏まえていない人が多いという.味噌汁と漬物のような食事や行動範囲が狭くなることを想像する.服は安く目立たないものを着るのだろうか,いや私は一点物を少なく持って大事に着回したい.これは今のうちに決めておく.食べ歩きなど浪費の趣味はないが,無駄遣いは懲りずにやってしまいそう.そして何より詐欺には気をつけなければ.
5.ひとり寂しくなる
妻は70代まで生きれば充分と宣う人で,95歳以降まで生きる予定の私は老後の20年以上をひとりで暮らす羽目になりそう.ボランティアや教会やハイキングの会にお世話になったり,近所のごみ拾いや朝のラジオ体操に参加しようと,いろいろと企んでいる.それだけ活動し続けることが大事だと思うからだ.定年後できるだけ長く時給で働きたい.清掃や商店の品出しを考えている.それほど苦はない.動けば夜も眠れるだろうから.
