テレビを見た後の虚脱感は何だったのだろう.わが家にテレビがないのは,実家暮らしの時にテレビの虚しさを痛いほど感じたからだ.テレビの世界を世の中の縮図だと思ってしまっていて,社会へ出てからもなかなか先入観が振り払えず苦しむことになった.テレビから離れて10年以上になるが,たまに聞くラジオにも虚しさを感じる.お笑いやポップスはほとんど視聴していない.今は心地よい充足感に毎日満たされて過ごしている.
私は多分あまり精神が強い人間ではない.思考や自省に関しては強いと思うが,刺激や興奮には弱く,自分で控えるしかない.欲しいと思っても1ヶ月ほしい物リストに入れるという方法を採って以来,買う物が相当減った.衝動的に行動してしまう人間なのだろう.それだからか,快楽に忠実な人とは仲が良いことが多い.私も影響されるのだが,最近は自制できるようになりつつあり,絶え間ない快楽なんかは外に求めなくなった.
興奮に弱い脳を持っている自覚がある.常に一定の興奮に包まれていないと不安に襲われることが,20代の若い時は多かった.興奮で不安を覆い隠していた.今は,安心して穏やかにいられる時間がほとんどで,だいぶ成長したものだなと思う.須く,興奮も求めない.たまに聞いてしまうテレビやラジオなどのメディア放送で刺激を得てしまった時は,平常に戻すのに苦労するが,一晩明ければ忘れるくらいのことである場合が多い.
つまり,自分の人生を生きていれば,どんな刺激であろうと受け入れて楽しめるのだろう.自分を見失い忘れるから刺激に対し不安になるのだろう.希薄な自分しか持っていない時には刺激を遮断し,確立している時にだけ刺激を受けるようにすれば,不安になる機会も減るだろう.昔のように四六時中テレビがついているような環境は私にとっては地獄のようだった.テレビしか娯楽がない時代があったそうだが,とても想像できない.
