自分は障がい者という身分で生きている.先天性の脳の特性のため,働くことができず,日常生活にも支援が必要な程度に生活が障害されていて,年金も下りるほどなので,決して軽度のものではないのだ.職場もウェブデザイン事務所ではなく,A型事業所である.全国的にも本格的に仕事する事業所で,ボールペンの組立や清掃では物足りない障がい者が集う.一般企業と遜色ない業務だと自負している.
ここまで重い障害だとは,最近まで自覚すらなかった.これが普通だと思っていたし,これは個性であり,強みであると考えていた.しかし,最近自分の能力の不十分さがあらわれる出来事が度重なり,普通に生活しているサラリーマンの方がやはり優れていて,それと同じことは到底できない自分に直面した.できないことがあるから障害なのであるが,その程度の重さが分かってきてしまったのだ.
そうはいっても自分には簡単にできるが他の人にはなかなかできない特技がいくつかある.ウェブデザイン,誤植チェック,翻訳,星座や数学や物理の知識や解説,切り文字,立体造形など.ASDの人が得意だとされる分野はいずれもそれなりに経験してきた.仕事に困ることがないといわれたこともある.反対にできないこと,直面する困難は,いつも音声によるコミュニケーションにある.話し声では理解できないので,無能と烙印を押す人もいる.
ASDはコミュニケーションの障害なので,人によって評価が異なるところが難しい.自分にはできないことを高く評価する人には,たいてい評価される分野がある.技術があることを示せなければ何も評価しない技術者には,技術を示さねば首になる.ASDでありながら技術者としてやっていくには,多分野にわたる技術を示せなければならない.ほんとうはそんなこと常人にはできないはずだが,見えないところで鍛えていくしか道はない.障がい者なのだから.
