世界史を読み始めた.といっても高校までに習う戦争史ではなく,高校では教わらない数学史や科学技術史である.現代がいかに余暇に恵まれる時代かということや,どの時代にも比して変化が早い時代であるのはなぜかとか,もっと近しい例ではなぜこんなに素晴らしいものがこんなに手に入りやすくなっているのかとか,こんな小型のものや巨大な建造物をどうやって作っているのかとか,戦後に工学に何が起こっていたのかとか関心は涌いて出てくる.
アル=フワーリズミーが考案した三角関数表が,アラビア数字を採用した活字によって数百年かけて全欧州・中国全土に広まった話し.グーテンベルクの発明から20年後に印刷された天文暦を,コロンブスが船出した際に携行した話し.ネイピアの発明がイギリスの世界初の幾何学教授によって出版され,数年後ケプラーがデータを対数表で整理して惑星が太陽を楕円軌道で周回しているという法則を発表した話し.情報が瞬時に伝わる現代は,さすがにますます変化が早いのも肯ける.
量子CPUやロボットや知能エンジンが市販される2020年代,新しいプログラミング言語や数多のAPIや知能モジュールが登場し,社会に普及すべき製品として出回るわけだが,それを見据えれば仕事にありつけない人が増えるのを防げると思う.プログラミングを学ぶ機会を逸した小学生,情報学部で専攻しなかった大学生は苦労するだろう.大学のシラバスをみると一般教養でプログラミングの講座を開講しており,情報学部では1年次でAjaxを使う課題が出るらしい.
現代世界の加速は情報伝達の加速である.何かもっとわくわくする楽しい時代かと思ったが,仕事や収入など生活の心配が強まっている気がする.情報コミュニティは大概閉じているから,本当は同じことを考える人の間で起きている現象を,個別事象としてしか捉えられず孤独を味わうことがあると思う.だが共通していると知っただけで救われた思いになることもある.自分にしか起きない不幸はないし,不幸は分ければ薄くなる.
