いつもこの部録に記事をまとめると,頭がよく整理されて快い.翌朝はすっきりとして仕事に入れる.ある程度眠る前に頭を整理できているからだ.しかし,反対の事実もある.ある程度乱雑なほうが創造的になるのだという.今回はこの点を考察しておきたいと思う.
そもそも乱雑さを整頓することこそ,生きることである.世界では乱雑さが進んでいく.生命は緊急の事件に遭遇したとき応急に反応できるよう,普段から体内を分子的に整理している.本棚を考える.必要な情報があの本のあのところに書かれていると思って本を探すと,整頓された書架であればすっと引き抜くことができるが,部屋中が穢ければ諦めるしかない.
いつも整理しておく機械こそ,計算機でもある.木構造は狭い空間に最も多くの情報を詰め込める構造である.逆に樹木こそ,最も整理された構造である.植物は根から葉まで木構造である.本だって木構造である.図書館や書店も,書棚はどれも木構造である.整理されたものや整理できる道具を手に入れるとき,整理されたものに出合うとき,私たちは生命の力が漲る.
つまり,整理されたものを作り上げるには,あらかじめ整理しておくとらくであるが,乱雑にしてある方が整頓する余地があるため,整頓するすなわち創造的になることができる.作品は整頓の結果である.整頓する作業を日ごろから行っている人間である.いつも整頓しない状況にしておくと疲れてしまうときはあらかじめ整頓してしまおう.新しく考えなければできないときは,乱雑なまま寝かせてみよう.乱雑と整頓の間にいる私たち.
