先日旅行先で妻に,もっと気の利いたことが云えんのか!といわれ,その日ずっとどうしようと思っていた.自分は話をすることが苦手だと思っているが,問題があれば解決は必ずあると大学で教わったことを思い出し,帰って検索した.ちょうど自宅の鍵を持ち合わせていなかったので,玄関先で日が暮れるまで検索した.すると,やはり妙案はあるものだ.早速Pocketに入れた.
その方法とは,わらしべ長者のようにネタをストックするという簡単なことだった.ひとつネタを作ったら,それを投げてみる.人は投げられたら返してくれるものである.そうしたら返された話題を記録しておく.そうしてそのネタは膨らんだ.あとはパン生地のように発酵させるも良し,寝かせて味を出すのも良し,焼いてごちそうネタにするのも良い.ひとつのネタを生むことならできる.それを膨らませていくのである.
話題は尽きないものであるという.確かに例えば聖書のすべての項目を説教題にしようとしても尽きない.これだけ情報が行き渡る時代に,誰でも知っている話題だけを繰り出すほうがむしろ難しいかもしれない.誰でも気軽に話せる話題でおしゃべりを楽しむ,考えを述べて議論する,専門的関心を共有して心を寄せ合う.コミュニケーションとはほんとうは自由だったんだと気づくのだ.
話題の大敵は忘却である.何を話そうとしたか忘れる,故に聞いている話の脈絡を飛ばし,その場を黙ってしまう.沈黙も平和の裡のことだから,それもいいのかもしれない.でもどうしても忘れてしまうときは,どうするか.今度その方法を調べて,会話を満足にできる術を確立したい.自分の満足ではなくて話し手の満足のほうが重要なのは承知で,である.せっかく話を聞いても,どんなにその話が面白くても,忘れてしまうのは勿体ない.どうにかして豊かな会話ができる人になりたいのである.
