収力という概念を考案したことがある.ものを集める力である.収力が大きいものは物事を引き寄せる.人も物も,お金も情報も,何でも引き寄せる力だ.ではその正体は何かといえば,物珍しさである.収力とは物珍しさなのだ.つまり,珍しいものに物事は集まりやすい.
ものをずっと引き寄せ続けるには,ずっと珍しくあり続けなければならないが,難しい.ほとんどのものは,ものが集まるにつれ,珍しさが減ってしまう.集まったことで情報を得てしまうからだ.情報量が増えると,珍しさが減るので,引き寄せられていたはずのものは,より珍しいもののほうへ集められていく.
人間関係もこの力学だ.ある人が魅力的なのは,自分にはない,世間であまり見かけない,そういう珍しいものを持っているからだ.いざその人に近づくと,いろいろなうわさを聞き,外見情報を得る.そこで珍しくないことを知ると,あるいはあまりにたくさんのことが分かると,その人に近づこうとしなくなる.ここで近づけるには,秘密にしておくことだ.大事なことは隠れたところに収めておくのだ.
しばしば会う関係も同じだ.ある日,食事に行く.日頃の話しを交換する.すると,情報を得るので互いに帰る.しかしまた日数が経つと,いろいろな話題を持ち寄り,また食事に行く.情報量の増減が,別れては会う関係を繰り返す.
収力の強さは重力の大きさである.収力と重力は同じものだろう.すると,重力とは,情報量の大きなところにものを運動させる力である.私たちは,情報量の大きなところに向かって運動する日常を,飽きることなく続けている.情報が日常を継続させている.
