最近のメディアの論調では,年金維持や国債残高の話題からの亡国論や,少子化や低賃金によるストレス労働,性差平等や都市過密からくる女性的人生の絶望.メディアに暗い話題が多いのはいつの世も同じだ.けれども,最近聞かなくなったのは私だけではないはず,ビジネスに関する変化だ.
男どもが家庭を顧みるようになって,家族内での立ち位置が変わった,そんな男ばかりである.食卓に座っていれば滋養豊富な美味しい食事を供給され,食べ終わると席を離れ,テレビのある居間に横たわる.そんな男はもうほとんどいない.妻が働くようになったからと正当化したくなるが,私はここに国の豊かさが表れていると思う.
今まで男どもは懸命に働き,街を作り制度を作り,機械を作り商売を作って,国民を楽しませてきた.その功績である経済指標は,今や作りすぎて縮んだ市場を表している.男どもは作りすぎた.しかし,作ってきたものを国の資産とみれば,なんと富の大きな国だろう.真面目にビジネスする人にとっては厳しい現状だが,厳しさは余裕の為せる業だ.
この国の物質的余裕は,ビジネスの厳しさを個人的危機へと変換する.仕事がなくなっても求人はある.問題は仕事ではなく生活だ.そう考える若者が増え,ビジネスは様変わりした.そう考える若者もお客様だからだ.自分のことを心配できるのは社会に余裕があるからだし,個人も余裕の中で育ったからだろう.作りすぎた世代がもたらした若者の余裕について.
