自分は仕事ができる人間ではなさそうだ.専門のウェブの技術に関しては,一人前と評価されており,多分世界の同時代の最新技術者の中でも引けを取らないくらい詳しい領域がいくつもある,そう思う日もある.それでも,博士号を持つような優秀な研究者が集まっている組織である,実務能力など1年で比肩できるわけがない.
自分の弱点である話を理解する能力が,なかなか曲者だ.文字情報や形の情報であれば,早く確実に仕上げられる.空気を介する音声情報であれば,繰り返し聞いて記憶できる能力もある.しかし,目的と意図のある話を理解する能力は乏しすぎて哀しい.上司を困らせたり苛立たせてしまうし,指示とは異なる行動をとると注意される.
こう思うと,組織とは自分の裁量で自由に働く場所というよりは,指示や注文の範囲の中で指示通りに仕上げていくことが仕事だと錯覚する.制約が多いのでその分自由ではある.何をやってもよかった前の職場とは異なる.その差異に最近漸く慣れつつある.組織人として日々生まれ変わっている感じだ.
業務知識が豊富な上司たちのおかげでホワイトな職場である.立派で有能でカッコいいとも思う.なるほど自分は上司に比べれば全然仕事はできず,いつ馘になっても文句がないくらいにすぎない.それでも,専門のウェブの仕事をしっかりきちんとこなしているうちに,自分にしかできない仕事が舞い込んで組織に必要とされる人材になるかもしれない.

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