私の尊敬する合唱団の先生は,元会社社長を務めたすごい方だ.普通に暮らしては絶対に出会えない方で,謙虚に信仰を持つ鑑のようなお人柄.合唱団の練習の帰りはいつも,その方が車で拙宅まで送ってくださるのだが,車内での会話が本当に素晴らしい.もちろん私は会話が極めて不得手なのだが,その方はそれを知ってか知らずか,気立て良く包容する大らかさで,鮮やかに話しをしてくださる.
その方は仕事での出来事や,学生時代の友人知人のこと,家族や教会でのことをはじめ,いつも生き生きと情景が浮かぶように話してくださる.流石一流の芸の持ち主である.いつも話を聞くのが楽しみな私は,話しにいくらか乗るために質問を考えるのだが,その答えはいつも人生の素晴らしさを謳う石碑のように,明快に印象に残る.人生を持ち前の才能で面白く過ごした稀にみる立派な方だといつも思う.
その方は資産もかなりあるようで,その秘密の投資法を伺うことができた.どうやら,株式は買ったら売らない,売ったら証券会社が儲かるだけだと断言していた.配当は数%にすぎない,確かにそうなのだが,株を持っているだけで年間数十万円の配当が入る仕組みを作っているそうだ.年金が月に数十万下りるので少しの増額だが,月に数万円配当が入る生活は,確かに賢く羨ましい.
経済は拡大し,経営上余程の問題を抱えない限り,株価は上昇をし続けるものだという.長期的な目で見ればどうなるか考えてきたものだが,長い時間生きてきた方の警句こそ,自分の机上脳内の思案より信用できる.私はこの方に出会えて非常に良かった.出会わせてくれた神さまに感謝して床に就いた昨晩,この私の小さな人生が光り輝くほど素晴らしくなると確信し,今日も証券口座を確認したらこの1日で数万円増えていたのだった.

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