物を買う人で賑わう年始.福袋を持つ人の顔は華やぐ.人は物を持つために買い,買うために働く.少しでも珍しいものを見聞きして,ことによっては買って持つ.この所有したいと思う気持ちには,あるキーワードを充てたい.「倫理的否定」だ.つまり「私だけではない」とする考え方である.
しばしば,私だけではないと考えるには,私だけではないことの発見を伴う.経験してきたこと,悩んでいることが氷解するときとは,倫理的否定がなされたときだ.自分の経験の珍しさに誇りを抱いていた人が並の人間だと認識するときも,個人的な悩みを共有する相手がいなかった人が前に進めるのも,倫理的否定による.
なぜ倫理的否定が人の認識を解放するかといえば,人の個性はいくつかの珍しい特徴の組み合わせであり,本当に個人的な個性などないからである.遺伝子の,生育環境の,居住地域の,経済状態の,気候変動の,そういった非個人的な要素の組み合わせである.個性を敢えて否定する姿勢は,倫理を科学に変える.
話を戻す.物を買う人で賑わう年末,来年への希望で眼差は真剣になる.人は個性を持たせるために掛け合わせ,掛け合わせるために考える.少しでも多くの商品を見聞きして,ことによっては事業化する.この珍しいと感じる気持ちには,あるキーワードを充てたい.「倫理的否定」.つまり,私だけではないのだ.

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