欲しいものがなく,プレゼントが増えそうな今年.還暦祝,退職祝,結婚記念日に教会献金.今年は大金が動いても,自分のためではなさそうだ.自分に投資するというアイデアで,知識や技術や健康にいくらか時間とお金を使い,本の背表紙を眺めて満足しないように,街を歩くときなど風邪が染らぬように,などと特に気を付けて暮らした昨年.本も端末も増え,もう欲しいものはない.今あるものを長く愛用する,その愛着が問題だ.
モノに愛着を持ったことがあまりない.すぐ買い直せるからである.しかし,情報や文字列やデータに対する愛着は執拗く持っている.いつもあのときの文字列を,読みたいときにすぐに読めるようにしておきたい.あの本を一生懸けてでも理解したい.5回6回買い直した大切な本も幾冊かある.そういった本を幾冊持っている人は至福であるといわれる.私はすでに至福の域に達しているわけだ.
本は安くない.だが,本をある程度持つと,深い満足を味わえる.椅子に座り黙想し,読書した世界を思い浮かべ,まだ読んでいない本に思い巡らし,身に付けなければならない知識を予め思い描く.この幸福の正体は「満足」である.欲しいものがなく,お金も地位も名誉ももうどうでもよく,寝食忘れて本に没頭できる体力さえあれば,ひょっとして一銭も使わずにずっと暮らせてしまえる満足である.
今年も幾冊か本を買うだろう.縁のない本を幾冊か売るだろう.その中で,本当に熱中する本をこよなく読む時間を過ごせる日が月に一度でもあれば,幸せだ.読書中に眠ってしまい,長い時間読んでいられなくなった最近.歳を重ねる中年に入り,インプットの量が減るがアウトプットの質が上がるこの時期に,どういった読書生活を営むか,私は本気で考えた方がいい.書きたいこと作りたいことが明確になるほど安産が保障されるだろうから.

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