余計は贅沢である.標準を地で行けば,富も不要である.貧乏にも落ちない.でも余計は人間の性.もっともっとという要求を満たし続ける自己努力が推奨されるこの社会,人々が求めた余計な知識は,より大きな市場に成長する.私たちの仕事は余計なものに占められつつある.なにしろ余計は贅沢である.標準に満足し続ける人々には縁のない市場で,常人の知らない商品が売買され,作り手に資金が流れている.この社会は余分に豊かさを見出す.
余計であることは,無駄とは限らない.贅沢は無駄だろうか.余分に持ち,余計に消費し,余りを他人に譲る行為を,誰も冷視しないだろう.人生は長いので,無駄なものを買うことだってある.大きな損失を一時的に被ることもある.でもそのお金は必ず誰かのところに行き渡り,誰かに富をもたらしている.無駄なお金の使い方なんて本当はないのだろう,誰かのために使っているのだから.自分が余計に富を持っていると思うなら,積極的に消費したほうが善い.
贅沢な暮らしをするために富を持つのではなく,富を持ってしまったがために贅沢に消費せざるを得なくなる.実情はそんなところだ.金持ちになりたくてなった成金がすぐに富を減少させるのは,あらゆるものを消費して余計なものとたくさん出会い,遂には富を追い求めることに厭きてしまったからだろう.贅沢に憧れるのは庶民の考えだが,贅沢すなわち余計なものに囲まれた暮らしは,どこか乱雑で落ち着かず,生きている実感に乏しく,乖離していく感じさえあるだろう.
富を持つほど幸せである,という若い独身女性固有の考えは,富を達成すると破られてしまうだろう.達成できても,富は幸せを運んでこないからだ.余計な物事にかかずらっている間に,懊悩と未整理と管理上の心配に気を取られ,本当に安らぐ時間を持つことができなくなる.私は富とも貧乏とも距離のある額の資産を持っているが,今年はやや高価なものも幾つも買った.買うことは楽しい.でも,物を管理できず乱雑になることだけは避けたい.きちんと整理した部屋を維持し,必要なもののみ置かれた部屋で,余計なものから遠ざかった暮らしがしたい.本当に必要なもの.贅沢から逃走し,平均に隠れるのだ.平均も想像の産物だけど.

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