物事には最小の単位がある.物質なら原子,いや素粒子である.文章には文字.話しには音程.数には数字.この要領で見ると,最小単位でみる見方には,ひとつの物事に係り,いくつかの面がある.文字も印刷されていれば素粒子からなる.話しも単語からなる.数字は楽譜に載せれば音程を単位とする.物事を一面で見ない方が良い理由だ.
この最小単位という考えが好きなわけは,最小単位の組み合わせを一度認めると,実に豊饒な組み合わせの世界が開けるからだ.新しい物事の尽きない生活に変わるのである.だから最初に物事を見るとき,最小単位は何か,と問うてみる.その単位が小さいものであるほど,その物事を創造的に捉えられるはずだ.創造とは組み合わせだから.
料理の最小単位は味だろうか.味の単位は「甘酸渋塩旨」だろうから,その調合であらゆる味ができているとみる.そうすれば,濃度の定規が使える.何の味がどのくらいと書かれた定規だ.普段から基本に忠実な人は,最小単位をよく分かっている人だ.基本とはつまり最小単位をすべて知っていることだ.応用とは最小単位を自由に組み合わせることだ.
音楽も縦には音程,横には音の長さ,それを組み合わせた和音や調性,楽器の音色,パートとそのハーモニーなど,基本が分かって初めて開けて見えてくる世界がある.基本に忠実になりたい.ちょうど私が文字に忠実にいて,文字一文字にでさえ陶酔することもある,だからこそ新しい文字を発案する「作字」を趣味にできる.文字の最小単位は,文字の部首なのだ.

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