マーラー「復活」を練習していると,当時の昂奮が直に伝わる感じがする.勿論この曲の主題がイエスの復活という人類史上稀な奇跡だから,誰もが讃えたくなる.しかし,この昂奮劇しい曲を作り得た時代の空気も詰まっているはずだ.当時の欧州と括っては広すぎるかもしれないけど,これからわれらの時代に何が起こるか,何が起ころうとイエスが復活し死に打ち勝ったのだ,そんな空気があったのだろうと想像する.
彼らの時代に何が起きたか.結局のところ大戦争が起きた.40年余りの世界戦争.何万人の人々が討死し,どれだけの遺産が破壊されたのか,私は不勉強なので知らない.だけど,それ以来,これを超える戦争は起こっていない.その間に経済やら科学や技術や通信が余りにも発展し,人間も一遍通りではなくなった.人間のほうが変化した.攻撃や主義や差別は忌むべきものになりつつある.
わたしたちはどこへ行くのか.これだけ物が集まる街で,仕事が成り立ち,情報も知識も流通するなかで,人間関係のみが戦争の原因になりうるのだと教えてくれた人もいた.平和を冀めることが,市民の事実上の義務となり,全市民がきょうだいとなって和合する理想を教わる学校もある.殺戮の防止と,その裏腹にある自殺の緩和.殺人は有罪だが自殺は自由と旧約のときから言われている.
どこに行くのかと問うなら,その前にまず,なぜそこへ行くのかと問う.なぜには答えがある.できるだけ多くのものを維持し,できる限り改善し,社会を受け継いでいく.この辺りに多くの市民の行先が前提しよう.偏在する資本を貧困への援助を通じて分有し,健康で文化的な生活が行き渡るようにする.市民の考えることは多分大方違わない.そこに向け少しずつ確実に行うことが,この時代に何が起こるかを決めていく.

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