インテリアとエクステリアの中にあるのは私たち住人.家は住んでいる人によってやっと完成する.建築家やインテリアデザイナーが発注者に寄り添ってオーダーメイドでデザインを決めようとしてくれるのはこういうわけだ.住む人の住みやすさ暮らしやすさは,住む人によって多様だ.趣味嗜好に由来する所有物の数や種類,ライフスタイルに必要な物とその空間,障がいや病気によるサイズ感や生活環.どれをとっても,どうしても,ひとりひとり違う.
このことは家でなくても同じ.例えばウェブ.マシンスペックとウェブデザインの間にいるのがユーザーである私たち.ウェブは使う人によってやっと完成する.サーバー管理者やウェブディレクターがユーザーの立場で考えてデザインを決めようとするのはそういうわけだ.使う人の使いやすさ使い心地は,使う人によって多様だ.しかし,こうして建築と比べてみると,ウェブに固有の性質があることがわかってくる.
窓や柱や基礎などの部品でアーチやファサードやホールを作るのと同じ感覚で,ボタンやラベルでリンクやナビゲーションを作るのは同じだろう.しかしウェブは,ユーザーひとりひとりに肌理細かく対応できるようにはなっていない.むしろ発注者は使う人とイコールではなく,多くの場合発注者自身が使うのではない.建築は発注者と使用者がしばしば同じであるが,ウェブは発注者は一使用者に過ぎない.だから,ウェブは住宅ではなく公共施設だ.
私は仕事で公共施設を設計していたのだ.そういう意識は全くなかった.誰かが訪れることは分かっていても,どんな人がいつ訪れたかも分からないなかでも,この公共施設のメンテナンスを続ける,そういう仕事だと今初めて気づいた.公共施設も,利用者が利用することによって初めて完成する.どうしても違ってくるユーザーひとりひとりを,どうデザインするか.これは楽しい課題だと思った.

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