知らない世界を持つ幸せってあると思う.知ることは勇気がいる.知は冒険.まだ体験したことがない出来事を求めて開拓していく.若いころは冒険したいものだけど,ある程度やり遂げたことが増えてくると,自分の世界を限りたくなる.暮らしやすい環境を作ることが,冒険するよりも優先する価値になる.もちろん人による.生涯冒険して名を挙げる人だっている.でも人の中で,価値は移り変わる.
知らない幸せ.自分の築いた環境の中で生き,その外側の世界を覗くのをやめること.挑戦することも取り組み続けることも持ち合わせたうえで,それ以外の専門領域を無知と決めること.ひとつのことでさえ,知り尽くすことなんてたった一生の時間ではできない.広く浅く知ることが大事だという人もいる.でも,深めることがなければ,広く知っても理解が進むものだろうか.
今の自分には,仕事で必要な技術の基礎を固めることが重要で,深い知識を持つことを優先して取り組む必要がある.その環境は作っているし,技術書を読み込むことを続けている.人に教えて知識を深めるきっかけを作っている.仕事の時間外にも創作している.このまま進んでも,結構な深さまでたどり着ける気がする.しかし世界には先達がいて,一番になるとか唯一になるとかは決して期待しない.
知らないことで,世界を限るという手法は,思い切って限るのであり,関心を消すことではない.一事を深めると周辺の分野にも詳しくなる.広く浅く知ったことをつなげて,より深まることもある.でもきっと本当は,いくら深めてもいつまでも初心者.これ以上深められない知識なんて滅多にない.知ることは開始であり,深めるきっかけを得たということである.だからこそ,あえて知らないでいる世界を持っていれば,好奇心の芽を保存できるのではないだろうか.

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