ある尊敬する芸人が「もうウェブはあまり見ない」と言っていたのを見た.最近ウェブの利用が減っているよなと私は感じていた.検索機関ができてから数十年,今検索する目的といえば,ニュースを見るか動画を見るかで,十数年も継続して知的好奇心を燃やし続ける人はむしろ少数派.検索の頻度も必要性も下がり,ゴシップ的な報道に批判的に反応するようになった.純粋な知的好奇心の持ち主は,今のウェブユーザーにはきっと,少ない.
純粋に研究を続ける人間にとっては,検索機関は楽園であり,永続してほしいサービスである.けれども,検索内容によってはウェブサイトを見ずに動画やSNSから見てそれきりウェブサイトは見ない場合は多い.ウェブサイトは情報を確認する手段に成り下がり,周到に準備されたサイトのみ生き残り,私見や個人研究のサイトなど誰も見ない.ウェブサイトの情報の正しさは,ウェブデザインの印象で事実上決まっている.
ウェブサイトは本当に終わっているだろうか.動画のような受動的に聞く媒体を好む人たちは,恐らくほとんどがテレビから乗り換えた人たちだ.SNSを好む発信的ユーザーは,本から流れてきたユーザーであろう.前者は有名になることが,後者は作家でなくても発信できることが,根本的に重要.つまり現代は,有名無名の発信者になってその代償を稼ぐ人物像を,時代精神としている.なんでも知れ渡るようになった.
ウェブの仕組みは今後長きにわたり使われていくとしても,ウェブサイトを作る仕事や動画を作る仕事がどれほど続くか考えるより,今後ウェブがどのように使われていくか考えると,透明なディスプレイウォールやヘッドマウントディスプレイとスマートウォッチとの連携や,屋外巨大サイネージなどにコンテンツを提供できる言語としてウェブは生き残れると私は考える.ブラウザもスマホもノートパソコンも珍しくなるかもしれないけど,ウェブの仕組みと言語は進化し続けるはずだし,そうなってほしいし,そうしていきたい.

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