人生には悩みがあるべきだ.ポジティブであることを生活の第一状態とする生き方が唯一正しいのでもない.よく生きるには悩みが必要で,ちゃんと考えていることが重要で,そうしていつも考えることが人生に凄みを加える.普通の平凡な人生を望むなら,悩みはないほうが益しなのだろう.しかし,その普通のレールに乗ったコースを進むだけが生き方ではない.もちろん,そのコースが決まっていることは恵まれたことであるが.
私が最初に失敗したのは,高校の選択である.あまり考えずに決めてしまった.入れるものなら最難関の高校に入ってみたい,それくらいの単純すぎる動機.次席で入学したもののそれからが地獄で,実質1年しか登校しなかった.2年次は毎日故意に遅刻し,授業の半分くらいしか出席できず,3年目を迎えず中退した.その後の美術学校や大学生活も,中退経験が後を引き,10年くらい死欲と隣り合わせで楽しむどころではなかった.
なぜこうなったのか,今では少しは解明できる.この高校は生徒の自主性に任せる自由な校風で,生徒会がないほどだった.私は性分から規則が多いほうが心身が安定するのだが,この性質をよく弁えていなかったので失敗した.自分を知らなかったのだ.私にどんな些細な実力があっても,真ん中より少し上くらいの,校則の厳しい学校を望んだし,その後の人生も自由より規律を重視する職業に就いたほうが自分に合った.
今の仕事は,ウェブという創造性の試される面と,みなし公務員という自由より安定を重視する立場で働いている.この特徴は私の精神衛生に大いに貢献し,今人生で最も充実と幸福を謳歌している.奇跡的とさえ思う.人にはその人に最も合った人生が用意されているので,それを早く見つけたもの勝ちであるように思う.その選択に自信と責任を持つためにも,悩むことは役立つし,私は今後もある段階で大いに悩んで答えを見つけたいと願う.

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