クリスマスを前に,今年も日曜数学に投稿する.そのうち1本では,流体の数学について寄稿する.万物は流れる.変化し続ける.物質波の式「h=λp」を見ると,波長も運動量もゼロにならないので,万物は動き続けることがわかる.運動の不可止性と云ってもいい.波も粒子も動き続ける.私はこれを知っているからか,むしろ動かずに見える存在に強く惹かれている.これはもう大分長いことそうだ.
建築,美術,数学,文字.変わらずに見えるもの,変わらないだろうと見做されているもの,変わらないことを前提して設計されているもの.すべて興味がある.どうして変わらないように見えるのか,どうやって変わらないように見せられるのか.変わらないように見えるものには,変わらない分だけ未発見の知識が隠れていると私は思う.この変化し続ける世界で変化を止めているような存在.
万物は流れる,そう云ってしまうのは簡単だ.そう常に認識することも難しいことではない.昔の日本人も世界は無常と考えてきた.しかし,これを知ってしまうと,むしろ変化しないことのほうが貴重で,世界は変化しないと思っている若者のことが愚かに見えなくなる.変化しないと見せている存在たちは豊かさをもたらす.表面的であっても,変わらないものがあると感じられるだけで安心する.
変わらないものなんてない.近所の建築も,言語の意味も,数学の公理も,変えられる.日本国憲法や,モナ=リザや,神の愛など,変わってはいけないものもある.変えないならその分手入れがいる.エネルギーを費やし.整理整頓でエントロピーを下げ,手間暇を掛けて維持する.その営みは生きることそのもの.変化を停止しているように見えるところ,知は隠れている.この変わりやすい世界のなかでさえ.

コメントを残す