技術の真似されにくさとは.テクノロジーが特許で公開されると,特許収入が入る代わりに,製造方法を全公開しなければならない.もしよく詳しい人物を擁していれば,簡単に真似され,廉価で売られてしまう.高度な技術を安く買えるのは嬉しいもので,永続的に許して技術の進歩を独占し続けられる仕組みではない.特許に有効期限がある理由のひとつだ.一般に,特許が切れると本当に安価に上市する.医薬品や日用品や乾電池など,百均やドラッグストアに売っている商品である.企業は特許を占有するための知財戦略室を持っていて,利益の調整を担当している.
技術にも,真似されやすいものとそうでもないものがある.鉱物資源の採掘や素材は,鉱脈を保有することが重要なので,真似されにくい.物質性を扱うので,複製が困難なのである.逆に,ウェブテクノロジーはいとも簡単に複製できてしまうので,最低限のルールを守ったうえで容易に真似される.この「複製不可能性」の尺度は,情報注入が増えるほど容易になる.情報は,複製しやすいという性質を持つからである.「物質-情報」の尺度を物差せば,素材は真似されにくいが,化学加工,製品組立,研究開発,ソフトウェアプログラミングの順に情報性を多く占めるようになる.
物質を複製することは難しいが,設計図を複製することは容易だ.化学反応や移送運搬は複製できにくい行為だが,科学論文や文字情報を安価に流通させることは容易だ.この容易に複製できる情報そのものに特許を認めるために著作権制度ができた.3D出力によって,製品をスキャンして印刷することができる.このプリンタで外形は印刷して再現できるけど,素材そのものはインクがあるかに依存する.性能が形状に関する情報に依存した製品は容易に複製されるが,性能が物質そのものに依存した製品はなかなか真似されない.インクにない素材を使う部品は希少さを持ち続ける.けれどもいずれインクのパレットに加わるのだろう.
このように,製品の特長が情報に依存するほど,その製品は複製が容易になる.形だけが重要な製品なら,ものすごく安価に真似される.折紙工学や構造色など形を発明する産業もあり,微細な構造を開発して真似されにくさを担保している.技術の真似されにくさとは,情報に依存しない特徴の発明である.勿論,情報も今後の著作権制度の動向によって権利が守られていくだろうけど,情報さえあればどんな業者でも簡単に製造できるという水準事実が公然と横たわっている.クラファンのように流通前に購入金額を集める手法なら,真似されても期待利益は確保できるということか.

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