若い頃,お金がすべてだと思っている人は多かった.なにぶん若いときはお金がない.給料もないし株式など資産も沢山持てない.それでお金が一番大事だと金持ちの異性と結婚したり,給与の安定を目指して求職し,暫くしてそれらを後悔する,そういう人生の身の振り方をしがちだ.私はそうならないように警戒しつつ青春を過ごした.お金より大事なものがあることを信じ,探究しながら.
というのは,両親がお金を使わなくても幸せそうに暮らしていて,その身近な姿からお金が一番ではないんだなと簡単に分かり切っていたものだから,お金では買えない物事に早くから親しもうという魂胆だ.これは強ち悪い考えではなくて,今続いているいくつもの貴重な機会や趣味や活動の種を蒔いていたことになる.なるほどお金が一番ではないのね.
お金が一番でなくなる時が来ることも知った.ある程度欲しいものを買ってしまうと,これ以上お金使いたくないという時期がやって来る.お金で買ってきたものを管理しきれなくなり,買いすぎて使っていないものができたり,売るしか価値のない物に部屋が溢れたり,そういう経験が,お金が一番ではなかったことを気づかせる.長く生きているとそうなるものなのだろう.
老後のための資産形成として数千万円の目標を定められれば,死ぬ時まで豊かに暮らせる.少し贅沢な暮らしを求めなければ億単位で稼ぐ必要もなく,では一体何が人生で重要なのか,考えたことがあるだろうか.老いてなおお金がすべてだと考える人物を私は知らない.お金は貧しさから脱け出す手段であり,人を助ける機会でもあり,自分の暮らしのために使うばかりでもないはずだ.

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