スーツが好きと云いながら,スーツを自前で買ったことがない.新卒採用の時は父に選んで買ってもらった.学生の頃から僕はスーツが好きだと級友に公言していたが,好きというのは憧れで,いつか自分の給料でスーツを楽しめたらいいなと思い描いていた.それがいよいよ遂に実現する.紳士服店で1万円割引の券を入手したのである.今週末に注文しに出かけることに決めた.
好きなのに知識がない.そう思い,スーツに纏わる本を3冊買って読んでいる.スーツの嗜み方,アメリカン・トラッド,もう1冊は実用書.ミラノ巻きやセミウィンザーノットなど,ストールやネクタイの結び方も載っていて,早速面白い.結び方は鋭意研究に値するテーマで,最後には結び目理論で検証したい.こうして,ずっと昔に関心があったものの忘れてしまっていたことを,社会人の今,もう一度楽しめる.
若い時はファッションはセンスでなんとかなると思っていたが,私にはセンスに欠ける部分があり,特に色の組み合わせはいつも難しかった.しかし,中年になった今,服の知識が豊富になれば充分お洒落になれると気づき,特に紳士服はパターンに限界があるので,制約の中で遊ぶことができる.全く自由であるよりも,限界を定めた範囲の中のほうが,人は自由に動けるものだ.
きょう着ているものの理由を説明できるくらい,ひとつひとつ選んだ理由を気づいていたい.その一方で,こだわりに対しては控えめでありたい.35年も生きていると,主張が強かったり派手だったり地味すぎたりの塩梅を少し弁えてきたので,これから毎日身に付ける服について勉強し,服を楽しめるようになりたい.意外な面から道が開けた.紳士服店の割引券には感謝している.

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